キノトロープではWebサイトのリニューアルのお話をいただくことが多いですが、最近では既にCMSを導入されているケースも当たり前になってきました。

事前のヒアリング時には、「CMSを導入したがうまくいかず、CMSを入れ直したい」という声をよく聞きます。

「うまくいかないのはCMSツールが悪いから、別のCMSツールにすればうまくいくはず」とのイメージから、リニューアルの話に発展するケースもあります。特によくある事例は、下記のようなものです。

CMSは単純な静的ページと違い、システムが絡みます。システムが絡むと、CMSの種類によっては扱う人に高いリテラシーを求め、有効活用が難しくなることがあります。

場合によっては、Web担当者だけでは求めるページを作ることすらできず、制作会社への依頼が必要になってしまうことも。
またちょっとした調整を行うたびにシステムの改修が入るため、「もっと簡単なCMSツールが良かった!」となってしまうのです。

CMS導入により運用更新の手間が大きく削減されることを期待していたのに、結果として工数が増えてしまったケースです。

企業Webサイトの場合、ページ作成後に、上司に確認→関連部署に確認→公開というように、社内のさまざまな手続きが必要となる場合があります。

CMSには「承認ワークフロー」という機能があり、Webページの作成→確認→公開の手順をシステム上で完結することが可能です。

ですが、その「システム上の承認手順」と「会社として行わなければならない承認手順」の整合性が取れていないと、「今まで通り社内で承認手続きを行った上で、同じような承認作業をシステム上でも行う」という二度手間が発生してしまいます。

CMS上の承認ワークフローは、本来は公開ページの品質を担保する素晴らしい機能のはすですが、こうなると「ただの面倒な作業」になってしまいます。

承認ワークフローは、社内の運用ルールを整備しないとなかなか有効活用できません。中には、

等々、CMSが「重し」として圧しかかってくるという話も少なからずあります。

CMSは、サイト全体の体裁を整える「テンプレート機能」を備えたものがほとんどです。これは、サイト全体のガバナンスを担保するには有効ですが、ランディングページ等個別最適化が必要なページでは、あまり力を発揮しません。

本来であればガバナンスを第一に考え、会社として統一した取り組みをすべきです。が、それまで自由にページを作っていたWeb担当者からすると、ページ内で実現できる表現の幅が制限され、邪魔な存在となってしまいます。

上記のようなCMS導入失敗事例は、「すべてCMSツールが悪い、CMSを入れ替えればもっと運用更新が楽になるだろう」という、「社内都合」に対する不満です。

そこで考えていただきたいのが、何のためにCMSを導入するのか?ということ。

いざCMSツール導入となると、自社都合で考えてしまいがちです。特に顕著なのが、「CMSを導入することでWebサイトの運用更新が楽になるだろう」「さまざまな部署が好き勝手作っているWebページの体裁を整え、ガバナンスを強化したい」との思いからCMSツールを導入する方々です。

もちろん、これらもCMSツール導入のメリットの一部ではあります。が、Webサイトの本来の目的である、「Webサイトに訪れるお客さまに対し、どのようなサービスを提供すべきか」に注力して考えるべきです。

単純に「運用を楽にしたい」「ガバナンスを強化したい」だけであれば、CMSを導入しなくても成し得られる場合がほとんどです。

ページ制作が大変であれば、ページ制作を簡易化するアプリケーションを利用すれば良いですし、効率よく制作するのであれば、ページテンプレートの作成や、よく利用する要素をコンポーネント化しておくことも有効でしょう。

トンマナや体裁が整っていないのであれば、まずはガイドライン等のルール・方針の策定を行えば事足りる場合もあります。そもそも「運用更新が大変」と感じている方々は、運用体制や業務フローを確立していない場合がほとんどです。

そう考えると、単に運用を楽にしたいだけなら、CMS導入以外にも選択肢はたくさんあります。CMSは運用更新を楽にする目的で導入するのではなく、Webサイトとして成果を上げるため、Webサイトを訪れるお客さまに最高のサービスを提供するために導入するべきです。

ここで、Webサイトに訪れるお客さまに対して、どのように最高のサービスを届けるかが重要になります。

大前提として、Webサイトには、さまざまなお客さまがさまざまな目的を持って来訪されます。それはつまり、訪れるお客さまによって最適なコンテンツが違うことを意味します。

「Webサイトに訪れるお客さまに最適なコンテンツを提供する」

そう考えると、お客さまごとに何万、何百万といったページを制作する必要があり、それらすべてを最適なタイミングで、最適な方へ届ける仕組みが必要です。それはもはや人力では不可能です。

CMSでは、ページごとの管理だけでなく、一つひとつのコンテンツを一元管理できます。お客さまごとに最適なコンテンツを提供する仕組みや、表示箇所ごとの最適な表現の制御など、人力では実現が難しい作業がCMSによって叶えられるのです。

Web担当者は、ページ更新ではなく、お客さまに提供するコンテンツ制作に注力すべきです。

CMSをこのようにとらえると、冒頭に記したような「こんなはずじゃなかった」は起こらないはずです。

CMS導入は社内都合を中心に考えてはいけません。必ず、Webサイトを訪れるお客さまへのサービス向上のために導入すべきです。そして、そのサービス向上に対していかに貢献するか、そこがCMS導入のポイントです。どのCMSを導入するのかではなく、CMSを使ってどんなことをするのかでもなく、CMSを使ってどのようにサービスレベルを向上させるか、CMS導入の成功可否は、ここにかかっています。

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