これまでの記事でも書いたように、導入するCMSは「機能で選ぶのではなく、目的で選ぶべき」なのですが、とはいえ、こういったご相談もよくいただきます。

弊社ではお客さまのお話を詳しく聞いたうえで、目的にあった最適なCMSをご提案しています。
その際に、指標としているのが、「スケーラビリティ」です。

スケーラビリティとは、サイトや運営、企業の規模感のことを指しますが、主なポイントは7つあります。

今回は、7つのポイントについて、1つずつ詳しく解説していきます。

公開時に想定しているページ数やアクセス数により、その規模に耐えられるCMSかを判断することができます。

もし導入したCMSが想定している規模に耐えられない場合、スペックの高いサーバを増強すれば対処できるかもしれませんが、運営を続けるのであれば、ページ数やアクセス数は増えていくことが想定されます。

そのため、リニューアル時に基本的なパフォーマンスを担保しておかないと、サーバー費用が高くなるほか、スペックアップを都度行わなければならない等、公開後の負荷が高くなってしまいます。

CMSで管理するデータが増え、さらにサイトへのアクセスが増えたら嬉しいことですが、その結果サイトが重くなってしまっては本末転倒です。

だから、サイトの規模感(ページ規模と閲覧者の規模)は、CMSを選定する上で重要な要素です。

承認フローとは、ページを作成・更新してから公開するまでの手順のことです。

例えば、作成者がコンテンツを作成・編集した後、承認者である上司が確認して公開、といったように、ページを公開するまでの手順のことを承認フローと言います。

この承認フローは、企業によって異なり、複雑な承認フローが必要な場合もあります。

また、承認フローはCMSのシステムに影響が大きいため、必要な承認フローに応じて、対応できるCMSと対応できないCMSがでてきます。

そのため、公開後の運用にマッチするのか否かは、重要なポイントです。

CMSを選定する際に、よく見落とされがちなのが運用者の数です。
運用者の数とは、CMSの管理画面を扱う人の数と言い換えられます。

中には、CMSの管理画面を扱う人のアカウント数が無制限とされているCMSでも、複数の人が同時に接続すると極端に管理画面が重くなる(動作が遅くなり、エラーも圧制する)製品もあります

そのため、公開後の運用は何名体制で考えているのか、だけでなく、その担当者たちが同時にCMSの管理画面を触り、新規作成や更新、承認フローの作業を同時に行っても問題ないかは事前に確認しておくべきです。

CMSで管理するドメインの数も選定する上では重要なポイントです。

もし、複数のドメインをCMSで管理する場合、扱えるドメインの数が制限されているCMSは選択肢から外すことになります。

ドメインの扱いに関しては製品によって異なり、複数のドメインを扱えても、ドメインごとにライセンス費用が掛かるものもあれば、CMSのシステムが1つであれば1本のライセンス費用しか掛からない(ドメインごとにライセンス費用が掛からない)ものもあります。

また、複数のドメインを扱う場合のデータ一元管理方法も、製品により異なります。
製品により、ドメイン間でデータを共通で利用できないものもあれば、1つのシステムでドメイン内のすべてのコンテンツを利用できるものもあります。

そのため、ドメインをまたいでデータを利用するか(データ一元化が必要か)も事前に検討しておくべきです。

CMSを利用する運用費用も、製品によりさまざまです。

例えば、CMS製品をインストールしたサーバ台数によって費用が変わるものや、ドメイン数に応じて費用が変わるもの等…。

サイトの特性のほか、CMSでどこまで網羅するのか、管理する範囲によってライセンス費用が変わってきます。ですが、サーバへのインストールを前提としたCMSは、比較的年間のライセンス費用は固定化しやすい傾向があります。

また、最近増えているクラウド型CMSは、手軽に始められる反面、アクセス数や利用者数などで運用費用が固定でないサービスが多いため、年間の予算が立てにくい傾向があります。

費用の発生方法も、年間の予算取りに影響しますので、企業によっては選定ポイントになりえる観点です。

オープンソースCMSと商用CMSでは、無料か有料かといったライセンス費用の違いだけでなく、セキュリティに関することや、運用費用にも目を向ける必要があります

大前提として、オープンソースは攻撃されるリスクが高く、頻繁にバージョンアップを繰り返します。
ですので、少し古いバージョンのものを利用しているとすぐに攻撃されてしまいます

この攻撃に耐えるためには、バージョンアップやセキュリティソフトの導入が必要になります。
だから、単純に安いからといってオープンソースCMSを選択してしまうと、度重なるバージョンアップにかかる費用や、セキュリティソフトにかかる費用など、思いもよらない運用費用が発生する場合もあります。また、攻撃に対する情報は自社で常に最新の動向を把握しておく必要があります

そういった点から、近年ではオープンソースの導入を控える企業も増えてきました。

商用CMSの場合、ライセンス費は発生しますが、各攻撃に対するセキュリティアップデートはCMSベンダーが開発しますし、各サポートも受けられます。また、オープンソースCMSに比べプログラムが開示されていないこと、導入企業が限られることから攻撃されるリスクは極端に下がります

オープンソースCMSはライセンス費は抑えられるが、運用費がかさみやすい。そしてセキュリティに懸念が残る。
商用CMSはライセンス費は必要だが、運用費も固定化され、セキュリティもCMSベンダーが担保する。

自社の方針によって、選択が分かれるポイントです。

少しシステム的な話になってしまいますが、CMSにはページの配信方法に関して、大きく2つの方法があります。

それが「静的配信」「動的配信」です。

「静的配信」というのは、ページをあらかじめサーバに配置しておいて、ユーザーはそのページにアクセスし閲覧する仕組みです。

メリットとしては、すでに配置済みのページを読み込むのでパフォーマンスに優れる点が挙げられます。デメリットとしては、基本的には誰が見ても常に同じページが表示されるため、ユーザーごとにコンテンツの出し分け等が行いにくいといった点が挙げられます。

「動的配信」というのは、ユーザーはCMS自体にアクセスします。そして、CMSはアクセスしてきたURLやユーザー情報を元に都度ページを生成し、表示する仕組みをとります。

メリットとしては、ユーザーごとにコンテンツの出し分けが行いやすい点が挙げられます。デメリットとしては、アクセスされる度にプログラムが処理をするので、表示速度やサーバに与える負荷に関しては静的配信に劣る点が挙げられます。

どこまでコンテンツの出し分けを行うか、パフォーマンスをどこまで高めるか等、アクセス数やリニューアルの目的・目標に応じて静的か動的かを選択してください。

上記の7つの選定基準は、なかなかCMSベンダーからは聞くことがないポイントかと思います。
また、実際に扱ったことのある制作会社しか本当のところは分からないのが実情です。

弊社では、さまざまなCMSの制作実績がありますので、目的に応じて、そしてサイトや運営、企業に最適なCMSの選定を、リニューアルプロジェクトの一環として行っています。

また、導入するCMSは自社で独自に選定するのではなく、実際に構築する制作会社と共に選定すると良いでしょう。

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