企業のコーポレートサイト運用に使われるCMS(Contents Management System)。非常に多くのCMSツールが存在し、価格帯や機能のバリエーションも豊富。ライセンス費だけでなくリニューアル費用や公開後の運用も考えるとツール選定を失敗するわけにもいかず、悩んでいるご担当者もいるのではないでしょうか。

CMSツールの選び方については、「最適なCMSを導入するために。7つの選定基準」にて詳しく述べていますが、今回は選定前の情報収集として「コーポレートサイトCMSのトレンド」についてお伝えしていきます。

新しい技術やツールが目まぐるしいスピードで入れ替わるなかで、世の中がどのような選択をしているのかを知り、CMSの選定や自社コーポレートサイトの改善に結び付けてもらえれば幸いです。

下の図をご覧ください。プライム市場企業(2018年11月度のデータは市場第一部企業)のWebサイトに導入されているCMSツールのランキングです。

※DataSign社による上場企業CMS調査レポートより引用

対象はコーポレートサイトのみに絞ったデータでは無いですが、比率としては同じようなものと想定します。ご覧の通り、圧倒的に多いのはWordPressです。これは2018年11月時点のデータを見ても分かる通り変わっていません。今も昔も、導入数だけ見れば流行っているCMSツールはWordpressです。

2位以下を見てみると、2018年と比較して少し変化が見られます。
IRサイト(コンテンツ)の構築に強いSharewithが数を伸ばして2位に。オープンソースCMSのDrupalや、動的ツールのHeartCoreも大きく数を伸ばしています。またグローバルサイト等で導入が進んでいるAdobe Experience Managerが2022年には7位にランクインしています。サイトの役割や目的に応じて、強みを持ったCMSを選定する動きは増えてきていると思います。
また、Wordpressでもクラウド版のWordpress.comの利用が増えています。同じツールでもクラウド版を利用し、よりシンプルに・スピーディーに構築運用するような動きはトレンドと言えるでしょう。

TIPS:コーポレートサイトのCMS導入

企業のコーポレートサイトへCMS導入が進んでいることは確かですが、一方でCMS未導入のサイトが未だに多いのも事実です。
日本の上場企業コーポレートサイトにおけるCMS導入率は半分にも満たないと言われています。この背景には運用更新を外部に任せる(丸投げする)という従前の体制や意識があると想像します。専門的なスキルを持った会社に運用を全て任せるのであれば、わざわざ高いCMSに載せ替える必要もなく、HTMLで更新していけば良いという事になります。企業規模が大きくなるほどこの傾向が高くなると考えます。
アウトソーシングの活用も大切ですが、これからの時代はアウトソースであってもより効率的・効果的に運用が出来るCMSツールの導入は必要になるため、徐々に出導入比率は高くなっていくと考えます。

導入数以外のいくつかの観点からもCMSの傾向を見てみましょう。一つ目の傾向として、「CMSのプラットフォーム化」があります。

CMSはあくまで「更新ツール」という考えのもと、CMS=サイト更新と位置づけ、その他機能については各ツールを別々に選定し、導入・連携するようなパターンが今までは主流でした。現在も割合としてはこのようなケースが多いと思います。

しかし現在はWebサイトをただ更新するだけでマーケティング的な成功は難しく、メルマガやSNS、マイページやMA(Marketing Automation)機能などとセットで考え、サービス・情報・機能提供する必要性が高まっています。

それに伴い、予め周辺機能を備えたプラットフォーム型CMSが多く出てきています。(今までのツールにも同様の機能が付随している場合がありましたが、それぞれの機能が高度に洗練されて使いやすく、よりシームレスに連携できるようになった印象です)

プラットフォーム型の代表的なCMSとしては、「SiteCore」や「Salesforce」などがあります。全てをCMSだけで賄うのではなく、MAなど特定の機能のみは専用ツールを導入するといったケースもあります。

こういったプラットフォーム型のCMSが増える反面、機能をそぎ落としてWeb周辺の機能に特化させる選択をするCMSも傾向としてみられます。
例えば、Webの更新機能に加え、商品データや画像データの連携をスムーズに行うためのPIM/DAM機能を提供するような形です。

次に、「クラウドCMS」の増加が挙げられます。
クラウドCMSとは、下の図のように、予めサーバーにCMSがインストールされている状態で用意されたものを使うようなイメージです。この場合は、CMSのライセンス費用は最初に買い取る形ではなくサーバー利用費とともに毎月の運用費用として請求されます。(有償ライセンスCMSの場合)
ツールにより、「サブスク版」といった呼び方をすることもあります。

対して、サーバーを構築しそこにCMSをインストールして構築する従来型のCMSを「オンプレ型CMS」と呼びます。この場合は、CMSの初期費用としてライセンス(権利)を買い取ります。クラウド型のような毎月のライセンス費用は発生しません。(年間のライセンス保守費用は発生する事があります)

クラウド版のCMS導入は非常に導入が進んでいます。クラウド版のみで提供されているCMSツールもありますが、オンプレ型とクラウド型の両方を提供している場合も多いです。同じCMSツールでも、クラウド型へ乗り換えるようなリニューアル案件も増えています。

クラウド型のメリットデメリットは以下の通りです。

一番のメリットは、初期費用と期間を抑えられる点です。サーバ等の要件も大部分はクラウドサービスの仕様に則る形になるため、要件定義自体もスピーディーに行えるなど、プロジェクト全体の工数を削減することが可能になります。
反面、オンプレ型に比べカスタマイズできる範囲が限られるなどのデメリットがあります。例えば他システムとのデータ連携において様々な制限がある場合や、セキュリティ規定により高度な対策が求められる場合は、クラウド型では実現不可という場合もあります。またページ数やアクセス数などによって費用が変動する従量課金制も多く、サイト規模によってはかなりの高額になり、長期的にはオンプレ型よりも高額になってしまう可能性もあります。
目先のメリットデメリットだけではなく、LSC(ライフサイクルコスト)も考慮して選択する事をお勧めします。

続いての傾向は「静的CMSの再評価」です。こちらについての統計的なデータはまだありませんが、一時期の動的配信CMSの流行が落ち着き、特にコーポレートサイトでは静的配信CMSの導入が増えている傾向がありそうです。

コーポレートサイトで静的配信CMSが増えている理由としては以下が考えられます。

TIPS:静的CMSと動的CMSの特長

動的配信CMSも静的配信CMSもそれぞれ特長があります。自社サイトの役割や目的に応じた選定をお勧めします。

最後の傾向として「ヘッドレスCMS」があります。数年前から徐々に広がりを見せているヘッドレスCMS。ECサイトやBtoC系のサイトで導入が進んでいるイメージですが、コーポレートサイトでも認知が広まりはじめています。ヘッドレスCMSは、管理画面やデータベースの“バックエンド”と画面が表示される“フロントエンド”を切り分け、それぞれAPIを介して連携・構築する方法です。

イメージは上の図の通りです。従来のカップルドCMSは、バックエンド(データ)とフロントエンド(表示)がテンプレートして一体化しており、どちらかを直す場合にはどちらも手直しが必要になるようなイメージです。ヘッドレスCMSの場合はバックエンドとフロントエンドが切り分けられているため、データはそのままでデザインなど表示の改修をスピーディーに進められます。

キノトロープは20年前から「CMSはデータの一元管理を成し得るツールであるべき」と訴えてきました。データと表示を切り分けるような構築が出来れば、Web以外の様々なデバイスが登場した際に、各デバイスに応じた表示側を構築するだけでユーザーにサービス提供できる。ヘッドレスCMSは、これをシンプルにダイレクトに実現できる方法であると考えます。

また、サイトは公開して終わりではなく、PDCAを回しながら常にスピーディーに改善するという現在のトレンドにもマッチしています。極端な話、毎年デザインリニューアルをすることも不可能ではないです。

ただし、まだまだ十分に認知も広がっていない方法であるため、導入についてはしっかりと見極める必要があります。ヘッドレスCMSの主なメリットデメリットは以下の通りです。

メリットデメリットそれぞれありますが、サイトリニューアルコンペ等で大きなデメリットになりそうなのが「対応できる会社や技術者が少ない」という点でしょうか。
他にも、プレビューやワークフロー機能がカップルドCMSよりも弱い傾向があるため、複雑な承認フローを実装しがちな日本企業のコーポレートサイトに適用が広がるにはまだまだ時間がかかると想定します。

これからのCMS構築のスタンダードな手法になることも十分想定されるため、選定の際には視野に入れて信頼できる制作会社に相談されても良いかと思います。

国内外で有名なヘッドレスCMSをいくつか紹介いたします。

TIPS:サーバーレス化もトレンド

CMSとは直接的な関係は無いですが、Jamstackによるサーバーレス構築もトレンドです。
サーバーを介したやり取りが少なくなることで表示の高速化につながり、セキュリティ的にも強固になる事から、近年増加しています。特にコーポレートサイトなど動的に内容が切り替わるような処理が少ないサイトには向いており、サーバーレス+ヘッドレスCMSといった組み合わせでの構築はより増えていくと想定されます。

CMS選定にあたり、様々なCMSツールの機能や価格等を評価するようになると思いますが、具体的なツール選定に入る前にお願いしたいことがあります。

「任せる」を勘違いしないで!

業者はプロだからといって何でも丸投げしていませんか?
CMS選定だけでなく、そのサイトで「何をしたいか」といった目的決めまで決めさせていませんか?
結果、出来上がったものに対して「使いづらい」「想定と違う」といった不満を言っていませんか?

「任せる」と「丸投げする」は違います。専門知識やスキルが無いのは問題ではありません。それらが無くても、「何を成し得たいか」は決められるものです。

具体的な目的目標を決めましょう!

クライアント企業がすべきことは、目的や目標を設定する事です。
当然、制作側と一緒に考えるのは良い事ですので、丸投げせずにプロに相談して決めてもらえれば良いかと思います。
ポイントは、「具体的、かつ定量的な数値の目標が望ましい」ということです。

例)

具体的な目標数値があると、制作側も具体的なCMS選定提案がしやすくなります。

ツールをどう機能させるかは制作する側が提案すること!

CMSツールやWebサイト構築においては、制作する側がプロフェッショナル。オーナーであるクライアント企業の目的目標に対し、どのツールを使ってどのように成果を達成するかを考えて実装するのが制作側のミッションです。
だからこそ、しっかりとしたパートナー選びが最も重要であり、プロジェクトを成功させる最大の要因となるでしょう。

最適なCMSを選定してくれる良いパートナーを選ばれる事を祈っています。

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