CMSツールを選定するとき、機能や価格だけでなく「動的」か「静的」かという点も、最適なツールを選ぶ基準として知っておく必要があります。 また、「動的」か「静的」かによって、予め準備すべきインフラ環境、サーバー環境も異なるうえに、開発コストも異なります。 すでにCMS導入済みでリニューアルをする場合でも、今のCMSツールが最適なのか、目的に合わせたツール選びが肝心です。

一度作ってしまったら、運用に入ってから変更することは難しいので、制作が始まる前にCMSについて理解しておきましょう。

「動的」は、ユーザーがWebページにアクセスしてからHTMLを生成するCMS。
それに対して「静的」は、HTMLページを事前に準備するCMSです。

Webサイトに表示するコンテンツ(テキスト・画像・動画等)データをデータベースに蓄積しておき、ユーザーのアクセスによって必要なデータをデータベースからから出力し、その都度ページを生成するタイプ。

Webサイトに表示する完成されたHTMLページが準備され、そのまま表示するタイプ。
ユーザーにはすでにあるHTMLページを表示します。

十分な議論と設計に時間を要しますが、自由度のきくキメ細かいコンテンツの出し分けが可能です。また、サーバーサイドでの実装になるため、コスト、納期ともに、それなりの負荷はかかります。

基本は静的なページに対して、JavaScript等で外部からデータを読み込んでコンテンツの出し分け等を行う実装となります。フロントエンドにて完結する為、コスト納期とともに多少抑えられます。

アクセスしてからHTMLを生成し、そのパーツを組み合わせる仕組みです。
そのためユーザーのアクセスした目的(キーワードなど)ごとに、最適なコンテンツを出し分けて表示することができます。
言ってしまえばコンテンツの組み合わせで100人100パターン出すことができます。
そのため、One to Oneの対応に適しているといえます。また、他のツールとの連動連携がリアルタイムで可能です。

ユーザーのアクセスのたびに最適なコンテンツを引っ張って表示するため、リクエスト・選ぶ・表示のように、静的に比べて表示スピードが遅くなります。
また、その都度ページを生成するため、短時間にアクセスが集中するとサーバーに負荷がかかりダウンすることがあるなど負荷に弱いです。
そこで、サーバーを冗長化するなどの対策が必要となり、サーバーなどのインフラコストがかかります。
当然、サーバー台数が増えればライセンス料も高くなります。
「静的」よりトラブルに弱い、復旧に時間がかかる可能性がある、などもあります。

あらかじめ生成したHTMLページをアクセスしたら表示するので表示スピードが速いです。完成したHTMLページを表示するだけなので、アクセスが集中しても「動的」のように負荷がかかることは少ないので安定して稼働できます。
サーバーを冗長化する必要が無い分、サーバー等のインフラコストは「動的」ほどではなくなります。
CMSとWebのサーバーが別々になっているのでセキュリティ的に安心度は高いです。
「動的」よりもトラブルに強く、復旧が早いです。

最近流行のヘッドレスCMSを元にしたJamstack構成も、「静的」の分類となります。

用意したHTMLページしか表示できないため、ユーザーの目的に合った情報を引っ張って必要な情報を最適な形で表示することはできません。そのため、One to Oneの対応はできません。
キーワードや会員などアクセスの目的やユーザーが誰か分かっている場合、「動的」ではそのキーワード、その人に合わせて最適な情報をリアルタイムで提供できますが、「静的」ではある情報しか出すことはできません。
また、他のツールとのリアルタイム連動連携ができません。
その他にもHTMLページを作ってためておくため、複数人で運用管理している場合には、上書きされてないようにファイルの更新管理をする必要があります。
ページの更新の度にHTMLファイルをすべて入れ替える場合もあるので、サイトの規模が大きいと非常に運用側の時間がかかる場合があります。

基本情報を提供するようなコーポレートサイトでは、アクセスしてきたユーザーに対して共通情報を表示することが多いので、更新頻度も多くなく、One to Oneも求められないため、「静的」CMSを選択することが多いです。
また、規模が小さくコンテンツの量が少ないWebサイトもリアルタイムでコンテンツを出し分けるほどないので「動的」は必要ありません。
安定稼働やセキュリティ性を非常に高く求める場合も、「静的」を選択することがあります。

「動的」CMSは、売り上げに間接的または直接的に影響するような、成果を求められるWebサイトや、個々へのアプローチが重要となるものや、商品点数の多いECサイト、会員ページのあるサイト、情報ポータルサイト、求人や物件など検索が求められるサイトなど、ページ数が多く、運用更新も頻繁で、営業や売り上げなどビジネスに活用するサイトは、機能性・拡張性・システム連動・One to Oneなどの観点から「動的」を選択することが多いです。

「動的」と「静的」は、どちらがいいと比べるものではありません。
Webサイトの役割や目的、目標を前提に、やりたいことに最適なCMSツールを選択することで、プロジェクトの成功と公開後の満足感に繋がると思います。

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